鬼部長の優しい手




…部長って、そういえば意外と
優しかったなぁ…

夜道は危ないからって、
わざわざ走って追いかけて来てくれたり、頑張りすぎだって、あの大きな手で
頭を撫でてくれたり。




なんやかんやでここ最近、
頭の半分が部長で支配されてる。







はぁっと、気づいたらまた
私の口から、ため息が漏れていた。






「まーた、ため息ついてる。





…今日はもう帰ろっか?」




浮かない顔をしていた私に
呆れた表情をしながら黛実が
そう言ってきた。



「そ、そんな…っ
いいよ。黛実だって、まだ飲みたりないでしょう?




私一人で帰るよ。
ここからだと家が近いし、二人は
楽しんで!」





ダメだなぁ私。
黛実にこんなに心配させて
山本くんにだって気を使わせて。




いい歳した大人が、恋愛もまともに
出来ないなんて情けない…。
って、恋愛ってなによ!?
部長が恋愛対象なんて…
ないありえない!





「じゃあ、俺送ってくよ!
夜道に女一人なんて危ないし」



そんな自問自答をしていると
さっきまでお肉を頬張りながら
ご飯を掻き込んでいた山本くんが、
そう言った。




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