鬼部長の優しい手





あー、なんで…
虚しくなるだけなのに…





日差しが射し込む小さなチャペル
私は蝶の刺繍が施されたドレスを着て、
バージンロードの先で待ってるのは







…塚本、部長…




何度、自分が結婚したときのことを
考えても、


思い浮かぶのは
白いタキシードを着て、
ふわりと笑う部長の顔



だめだ…
考えれば考えるほど、泣きそうに
なってきた…



自分で引き起こしたことなのに、
落ち込んでまた、溜め息が出る。




「涼穂、また溜め息ついてるとこ
悪いけど




そろそろ時間なんじゃない?」


「え?」





ん、と黛実は
壁にかかった時計を指差した。










8時54分…



8時54分!?






「う、嘘でしょ!?」


「驚いてる暇があるなら、
さっさと行きなさいよ」




そうだよね!うん、そうだよね!


私は慌てて鞄を持ち、出ようとした






とき、





「あ…っ」






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