鬼部長の優しい手



「そうか、よくやった」


部長はそう言って、
大きな手を私の頭にのせた




うーん。これは部長の癖なのかな?
事あるごとに、こうやって頭を撫でてくれる。


まぁ、嬉しいからいいけど…






「はーい、そこ!勤務中にイチャイチャしない!」



気持ちいな、と思いながら、
目をとじかけたとき
背後から、そんな声がした。




「か、香澄先輩…」


振り返ると見えたのは、
腕を組み、仁王立ちする
間山香澄先輩。


優しく大好きな先輩であり、
部長の同期。






「全くさー、あっという間に
2人の世界に入っちゃって、


一応2人とも勤務中よ?
あとここ職場だから。」




「ふ、2人の世界ってなんだよ。
そんなの入ってない」




香澄先輩の言葉に部長は慌てて
否定する。



いくらなんでも、そんな全力で
否定しなくても…いいじゃない…





「いーや、入ってたわ。
絶対入ってた。あと塚本のあんな
幸せそうな笑顔久しぶりに見た」




少し落ち込む私をよそに、
香澄先輩と部長は話を続ける。





幸せそうな笑顔?
部長…そんな顔してたの…?




私は部長の表情が気になり、
気づかれないように部長の顔を
覗き込んだ。






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