気まぐれな君も好きだから
「あ、歩未ちゃん、そう言えばさ、あいつ、来週来るんでしょ?」

「.......え?」



大石さんは私の彼氏「沢井俊」と同期で、割と仲良し。

私に向かって言うからには、大石さんの言う「あいつ」は、俊のことに違いない。



「あれ? 違った? さっき、他の店の奴と電話してたんだけど、来週、沢井が歩未ちゃんの所に店巡に行くらしいから、一緒に飲もうとか言っててさ。」

「そうなんですか? まだ聞いてないけど、じゃあ、そうなのかな。」

「うん、多分。歩未ちゃんも一緒に行こうよ。休み合わすから、いつ来るのか聞いといて。」

「あ、はい。」



私の異動直後に現れて以来、俊はこの店に来ていないから、大石さんの話は十分あり得る。

でもまさか、今、この場面でそんな話が出るとは思ってもみなかったから、何とか笑顔でやり過ごしたものの、どう反応したらいいかわからない。



俊の名前を聞いて、遥希の顔色が変わったのは、すぐわかった。

私の中にも微かに緊張感が走る。



遥希の息遣いをそばで感じる場所で、私は俊に普段通りの顔を向けられるのかな...........
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