気まぐれな君も好きだから
「歩未ちゃん、どれが好き? 」

「う〜んとね。この紅しょうがのやつとか、味にメリハリがあって好きかな。サッパリしてるし。」

「生地に甘みがあるから、紅しょうが美味いよね。」

「え、俺、こっちのコーン入ってるのが良いな。」

「これ、 子供受け狙いなんだけど。」

「わはは.......マジ?」



なんて、すっかりくつろいでいたら、隣にある魚屋さんのバックルームの内線電話のランプが光った。

電話がプープー鳴ってるのに魚屋さんは空っぽで、誰も電話に出ないから、スピーカーから事務所のパートさんの声が聞こえて来た。



「すいませ〜ん。その辺に久保さん、いますか?一階に傘、出しに行ってるって聞いたんですけど。」



え、私?

とりあえず、急いで受話器を取りに行くと、「品川店から、二番にお電話です」と告げられた。



古谷君だ。

胸の奥で、トクンと小さな音が鳴る。

小さなドキドキを感じながら、点滅している内線電話の二番のボタンを、そっと押す。



「もしもし、久保です。」

「ねぇ、なかなか電話出なかったけど、今、何してんの?」

「え?」
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