恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「付き合うとかそういうのは、当分の間できません」
真琴は、そう言った。真琴の言うことは、もっともだった。
もともと愛のない結婚を破談にした古庄より、友情を裏切ってしまう真琴の方が、苦しみは深かった。真琴の性格を考えれば、何事もなかったかのように付き合うのは、とうてい無理な話だった。
問題なのは、その〝当分の間〟というのは、どのくらいの期間なのかということだ。真琴は、「分からない」と首を横に振った。真琴の罪悪感が消えるまでとするならば、きっと何年も待っていなければならないだろう。
想いが通い合っているのを知りながら、何年も待つなんて、そんな切ないことはとても耐えられないと、古庄は思った。
「とりあえず、一年待ってみる。それからのことは、また考えよう」
古庄は、そう言って提案した。真琴も考えた末に、その提案にうなずいてくれた。真琴との未来が拓けて、このときの古庄はひとまずホッとした。
たったの一年。このときは、そう思った。
しかし、されど一年間。元婚約者の心を癒やし、真琴が心の整理をするために必要な時間だということは、古庄だってよく分かっている。けれども、待っている時間というものは、恐ろしくゆっくり過ぎていく。ましてや、愛しい真琴は毎日古庄の隣にいるから、いっそうの我慢を強いられる。