ミクロコスモス
娘が口を開き、果実にその白い歯を立て――



がぶっと、かじりついたからだ。







「な、にを・・・」



信じられない。



だって、だってこの娘は、この娘は、何かを、悟っていたんじゃないか?


だからこそ、『罪の匂い』なんて言葉を言ったのでは?






「それは・・・それには・・・・・・」



冷や汗がふきだす。


あわあわと唇を動かし、かすれた声で言葉を紡ぐ。









「知ってるわ。」



うろたえきった俺に、娘はにっこりと微笑んだ。


完璧な笑み。

絶対的な口調。




娘はふふふと可憐に微笑み、舌で、唇の端についた果汁をぺろりとなめとる。






< 34 / 53 >

この作品をシェア

pagetop