ミクロコスモス

旅人Ⅳ




~旅人Ⅳ~



少女は歩く。

淡々と、無言で。


どこへ行くのか未だに知らせぬまま、ただただ歩き続ける。



傘の話は、あれから一度も出ていない。

そもそも、会話をしていない。


少女はただ前に立って歩いているだけ。



そしてやっぱり、人っ子一人いない。

動物も人も・・・生物を、見かけない。


建物はあるのに、どこにも人の気配がしない。




この街に、本当にあの人はいるのだろうか。


それなりに歩いているし、歩く道や建物は違う。


だけもどこも静かで、人の気配がしなくて、同じ雰囲気。



道の雰囲気が違っているというのに、建物が違っているというのに。

まるで迷路に迷っている感覚におそわれる。





――この少女は本当に、一体何者なのだろう。


どうしてこの、誰もいない街にいる?

親は一体どこに?



いや、そもそも・・・人なのだろうか。





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