0.5秒
プロローグ
辺りが暗くなり、突然のスポットライト。

幸せな音楽が、会場を包み込む。

雨のような拍手と共に、新郎と新婦が現れた。

「いいなぁ。」

私は、白い手袋越しから、嫉妬にも似た感情と一緒に、拍手をしていた。

「いいですよね。」

増えていくのは、次々と変わる若い後輩と、私の枝毛ばっかり。

「ほら、サボるなよ。」

それと、コック達の小言も。

少しだけ慣れてきた、ホテルでの結婚披露宴のサービススタッフ。

「まゆさんは、結婚しないんですか?」

できたら、したいです。

いえ、とてもしたいです!!

だけど、突然のクエスチョンに、

「まだ…、いいかな。」

あはは。と、笑っては見たものの、無理していたのが筒抜けだったのか、興味が無かったのか、

「あっ、料理できてますよ?」

と、そんな言葉に、また、肩が下がる。

何個持てばいいのか。と思うくらいの料理のお皿に、私の腕もプルプルしてきた。

早く、早く。

テーブルへ急ぎ足で駆け寄り、招待客への笑顔も忘れずに。

「さすが、まゆちゃんだ。」

空っぽになったお皿は、その倍の量を運びます。

何故か、仕事ができる女性。だとか、頼もしい先輩。だとか、周りからは言われていた。

はっきり言って、迷惑です。

私、女です。

重い物を、早く下ろしたい。

投げ捨てたい。

そんな思いです。

「重いですね。」

そんなことを口にしている、後輩の彼ら、彼女ら。

私は、目が飛び出しました。

だって、私は両手で8皿。

君達、2皿。

「そ、そうだね。」

世の中、何か間違っていると思います。
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