年下オトコたちの誘惑【完】
「理由は。あんだろ?断る理由がよ」
「それは…」
「楓が好きになったか?それとも、尚樹か?眞一郎かっ⁉︎」
「…ううん、違う。そうじゃないの…。ごめん、これしか言えない…」

理由は他にあって…。でも、それは碧都には言えない。

だってまだ本人のわたしが、受け止め切れてないんだから…。

「信じてくれないかもしれないけど…。碧都の気持ちは、スゴく嬉しかった。ホントに嬉しかったから…」
「だったら…‼︎」

わたしは、ゆっくり首を横に振った。

「碧都なら、イイコと付き合えるよ。ちょっと強引なとこあるけど、時折見せる笑顔とか、優しさとか…」

“スーッと”と一つ、呼吸を置いた。

「そんな碧都に、わたしは惹かれたよ」

ニッ、と口角を上げて目を細める。もうこんなこと、二度とないんだろうな。

だから、わたしを好きになってくれた碧都を忘れないように頭に、心に、目に記憶する。

「好きになってくれて、ありがとう。わたしの一生の宝物にする」
「杏っ」
「もうバイトの子に、手出しちゃダメだよ?分かった?」

わたしを見つめる碧都に、『送ってくれて、ありがとう』そう言って、わたしは碧都の前を通り過ぎた。

『スキ』

碧都には聞こえないように、口パクで伝えたわたしの気持ち。

吊り橋効果なんかじゃない。きっとわたしは、出会った時から、どこかで惹かれてたんだと思う。

碧都、幸せになってね…。
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