年下オトコたちの誘惑【完】
「杏、泣くと寝ちゃうんだよね。子供みたいでしょ?」

俺が傍に寄ると、杏じゃない声が俺を苛立たせた。

「そんな怖い顔しないでよ」

怖い顔なんか…してたか。その人は、俺を見ながら苦笑いした。

「杏を寝かせたいんだけど、どこかある?」
「コッチ」

また杏のこと、優しい目で見やがって。俺は、余計なことは話さずに指で部屋があるほうをさした。

「そっ。連れてってもいい?」

その言葉に返事はせず、俺が歩き出すとソイツは杏を抱えて付いてきた。

俺と一緒に付いてきた奴を、三人は何も言わずに見ていた。

部屋に入ると『どこでもいいの?』と聞かれ、頷くと左端のベッドに杏を寝かせた。

「よいしょ、っと…」

そして、杏の髪をヒト撫ですると、奴は微笑んだ。

「時間ある?」
「は?」

帰るんじゃねぇのかよ。奴は微笑んだ後、ゆっくりと俺を見た。

「碧都くんと、話したくて」
「俺は、話すことない」
「あれ、もしかして何か誤解してる?」
「は?」

クスッと笑う。余計に腹が立つ。バカにされてる感、満載だ。

「杏とは、何もないからね?」
「そんなわけねぇだろ」

杏を見る優しい目、何もないわけがない。
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