年下オトコたちの誘惑【完】
「杏のお母さんは、一人で一所懸命働いてたよ。朝から仕事して、数時間寝て夜も仕事して。杏は、俺の家で預かってたんだ」

仕事一本、オンナ一人じゃ家計は苦しいか…。

「杏はとてもイイ子でね。ホントは、母親といたいクセに、それを俺らに見せないようにしてたよ。だから言ったんだ。『杏、俺をお兄ちゃんだと思って、何でも話なよ』って」

あー、それで『血の繋がってない兄』ってわけか。

「それから杏は、俺をホントの兄のように慕ってくれたよ。この通り、今でもね」

悠太さんは笑う。でも、まだどこか寂しそうな顔をしていた。

まだ、なにかあるのか…?けれど、悠太さんは全然関係ないことを聞いてきた。

「碧都くんは、杏のこと好き?」
「なっ…んで、そんなことアンタに…‼︎」
「言いたくなかった?でも兄としては、心配なのですよ」

兄…。そう言われると、言わなきゃいけねぇじゃねぇかよ。

「碧都くんなら、杏を任せられると思うんだ。俺の直感だけど」

直感って…。なにを根拠に、そんな考えに結び付くんだよ。

「俺、悪い奴かもよ?」
「そんなことないよ」
「なんでそんなこと、」
「杏を見る目が優しいからね」

何を言っても、この人には敵わない気がした。

「杏のことは、好きだよ。ムリヤリにでも俺のモノにしたいくらいに」

そう、言ってしまった。

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