年下オトコたちの誘惑【完】
「ここまでかな、俺が言えることは。って、全部言ったようなもんだけど」

悠太さんは苦笑いをして、俺を見た。

「なんかうまく、のみこめないっす」
「だろうね。俺も最初は理解できなかったよ。杏の母親と付き合いがあったから、なおさらね」

関係ない俺らが、理解できねぇんだ。杏は、どれだけ苦しんだんだ。いや、まだ苦しんだよな…。

「まぁ、何か聞きたいことがあれば、いつでも連絡してよ。碧都くんなら、歓迎するからさ」

悠太さんは俺に名刺を渡してきた。

「じゃぁ、俺は帰るよ。杏のこと、支えてやってね?碧都くんなら、俺は安心して杏のこと頼めるよ」
「杏起こさなくて、いいんすか。きっと寂しがるんじゃないすか」
「大丈夫じゃないかな。碧都くんがいるんだし」

なんの大丈夫、だよ。二人きりにさせられて、俺はなにを話せばいいんだよ。

「ったく、無責任な兄」
「ハハハ、そうかもしれないな。じゃぁ、あとは頼んだよ?カレシになるかもしれない碧都くん?」

なんだそれ‼︎なるかもしれないって。悠太さんは、手をヒラヒラさせ帰って行った。

最後、杏を愛おしそうに見つめながら…。

「…どうすっかな」

とりあえず俺は、杏を起こさないよう、ベッドに腰を下ろした。
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