彼氏人形(ホラー)
「そんなのおかしいよ……」


「陽子?」


「あたしたちは人間で向こうは人形。実紗の言っていること、間違えてないよ? それなのに、なんでこんなことされなきゃいけないの?」


彼氏人形は夢を与えてくれるものだと思っていた。


だから、購入した。


それなのに周囲に嘘をつき、怒らせないようにビクビクして過ごすなんておかしい。


「……もしかして不良品だったのかな」


涙で目を潤ませたまま、実紗がそう言った。


「不良品?」


「うん。いくら安くてもバイト代で買えるなんておかしいよね」


「まさか、不良品だとわかっていてあたしたちに売ったってこと?」


聞きながらも、言われてみれば実紗の言う通りだと感じる。


バイト代であれだけの人形が買えるなんて、普通じゃあり得ない。


もしそれが相場なら、彼氏人形はもっと広まっていてもいいハズだ。


だけど、彼氏人形の存在を知っていたのは有里だけ……。
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