彼氏人形(ホラー)
草をかき分けていくと薄汚れたクリーム色のトイレが見えた。


「ここで吸っていたのよ」


トイレの掃除もされていないようで、壁にはスプレーでの落書きが目立つ。


「ここでしゃがみ込んでいたら、本当に人目につかないわよね。なのにどうして藤井さんはこんな所に来たのかしら?」


あたしはそう言い、首をかしげる。


わざわざ草が生えた公園に入ってくる理由がわからない。


トイレに行きたかったとしても、近くにコンビニがあるから普通はそちらを選ぶと思う。


「あたしみたいな子を探していたんだと思うわよ」


有里がそう言い、自分を指差した。


「どういうこと?」


「少し危険だけどお金になる事を手伝ってくれるような、若者ってこと」


なるほど。


それなら頷ける。
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