彼氏人形(ホラー)
葵君はそんな実紗を冷たい表情で見下ろしている。


あたしは実紗の肩を抱いて「実紗、落ち着いて」と、なだめようとする。


しかし、実紗はあたしの言葉も耳に入ってこない様子で、ボロボロと大粒の涙を流し始めた。


「ねぇ、実紗あたしの話を聞いて?」


「もう嫌! もう限界なの! ねぇ陽子、手伝ってちょうだい。そのためにここへ呼んだのよ」


「え……?」


実紗は視線を葵君に向ける。


「あたしは……葵を壊すわ」


低く、唸るような声でそう言い砂場のレンガを1つ手に取る実紗。


「実紗……本気なの?」


「えぇ。本気よ」


【彼氏人形】を壊す事。


それはあたしだって少しは考えていたことだ。


でも、人間離れしたパワーを持っている【彼氏人形】に立ち向かうなんて、無謀な行為だ。
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