彼氏人形(ホラー)
その声を聞きつけて実紗が走ってくる。


「葵!!」


実紗はあたしを追いこして葵君の元へと駆け寄る。


「見つかってよかった……でも、どうしてこんな所に……?」


葵君にギュッと抱きつく実紗を見ながらあたしは首を傾げた。


「どうしてって、今日は実紗はここでアルバイトだったんだろ? ずっと待っていたんだ」


そう言い、微笑む葵君。


「ずっとって……こんな夜中までずっと?」


実紗が顔をあげてそう聞く。


「もちろん。俺と一緒に帰るよな? 実紗」


葵君の言葉に、あたしと実紗は目を見かわせた。


アンドロイドには時間の感覚がないのだろうか?


普通、ここまで長時間待っていたらなにかおかしいと気が付いて、家に帰ってもいいのに。


そう思って無言のままでいると、葵君はなにかを勘違いしたのは、不意に厳しい表情を浮かべた。


「実紗、俺と一緒に帰るんだろ?」


キツイ口調でそう言い、実紗の右腕を掴む。
< 65 / 304 >

この作品をシェア

pagetop