あの日あの時...あの場所で







数年して、ママの死を知ったおばあ様が、私を引き取りたいと申し出てくれてアメリカへ。


それから三年間、アメリカのおばあ様のお屋敷で暮らしてきた。



おばあ様はかなりの資産家で、なに不自由なく過ごせた。


幸せな日々だったと思う。


優しいおばあ様と、屋敷の人達に囲まれて。


だけど、2ヶ月前、おばあ様は天国へと旅立った。


交通事故。


ハイウェイを走るおばあ様の乗る車に暴走車が追突した。


おばあ様も運転手も、そして暴走車の運転手も即死。


車はハイウェイで激しく炎上した。



おばあ様の秘書から連絡を受けたパパが駆けつけてくれて、全ての段取りを秘書とともにしてくれた。


セレモニーやら相続やら引き継ぎやら、やることは山ほどで。


私一人なら途方に暮れてたと思う。



おばあ様の大好きだった屋敷とその維持費だけを残して、両親の居ない子供達を支援する団体に寄付することにした。


私はたまたまおばあ様やパパがお金持ちで助かったけれど。


きっと困って苦しんでる子供は沢山居るはずだから、少しでもその子達の幸せになる手伝いをしたかったんだ。


ただのエゴだと言われるかもしれないけど、私は身の程に過ぎるお金を手に入れる事よりも寄付を選んだ。


向こうで暮らすつもりでいた私を、パパがどうしてもと日本に呼び寄せてくれた。


『何か在った時に、直ぐに助けに行くことの出来る距離でいて欲しい』

だなんて言われたら、断ることは出来なかった。



あまり良い思い出のないあの家は嫌だろうと、通う学校の近くにマンションを用意してくれたのは、パパだ。




「咲留、ごめんね?私はパパの用意してくれたマンションで暮らす」


と言えば、


「くそっ、親父の奴、何にも言わなかったのはこれだったのか」

パパに切れてるし。


「遊びに来れば良いでしょ?部屋は広いから」


「よ、よし、今すぐ行こう」

急に立ち上がった咲留は行く気満々で。



「ほんま現金やな?」

と源次は笑う。


「煩せぇよ。さ、帰ろう、瑠樹」

源次を睨んだ咲留は私に手を差し出す。


「うん、帰ろう」

私はその手を掴む。


咲留の手が暖かいのを知ってるんだ。










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