あの日あの時...あの場所で






テーブルに料理を並べ終えた頃、レストルームから戻ってきた咲留。


タオルでガシガシと髪をタオルドライしながらこちらへとやって来た。

パッチリ目を開けてる所を見ると、シャワーを浴びて頭がようやく起きたらしい。



「おはよ、瑠樹。制服が良く似合ってるぜ?」

ゾクッとするような色気を垂れ流してる咲留。


お兄ちゃんじゃなきゃ、ドキッとしてあげたんだけど、あいにく何にも感じやしない。


「おはよう、咲留。ありがとうね?でも、上半身裸でウロウロするなら出入り禁止にするからね?」

と笑顔を向ける。


「あ、ごめん。すぐ着る」

慌てて荷物を置いてある客間に駆け込んでいった我兄。


非常に面白い動きをする。


フフフ...朝からバカね?

あれのどこが、クールな男なのか知りたいわ。



シャツとデニムに着替えた咲留が戻ってきた所で、朝食が始まる。


「美味い。瑠樹は本当に何でも器用だな?」

咲留はスクランブルエッグを頬張りながら微笑む。

「そんなことないよ。出来ない事もあるし」

神様でもないんだから、苦手な物もある。


因みに、私の苦手な物は道を覚えること。

所謂、方向音痴ってやつだ。

一人でウロウロすると、必ず目的地にたどり着かない。


昨日は空港からタクシーだったので、咲留の所にたどり着けたけどね。



「相変わらず方向音痴か?」

と聞かれ、


「そう簡単には直らない」

と答える。


咲留と一緒に住んでた頃も、何度か迷子になって迷惑をかけた覚えがある。


ま、最近ではスマホがナビしてくれるので、随分とマシになったけど。



「今日は俺が一緒に行くから良いけど、学校通えるのか?」

そんな心配そうな顔しないでよ。


ダメだとか言ったら、毎日泊まりに来そう。


「ここから直線で800メートルだから迷うことない」

パパが方向音痴の私を心配して、このマンションを見つけてくれたんだし。


オートロックでセキュリティーのしっかりしたマンションで、高校まで直線で通える場所。


ここが一番条件にあったらしい。



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