あの日あの時...あの場所で





先生の声をぼんやりと聞きながら、頬杖をついたまま教壇の先生から窓の方へと視線を向けた。


そこから見えるのは特に変鉄もない景色。


残暑の残る校庭、木々の葉はまだ青々としていて。

今の私には眩しく見えた。



私はどうしたいのかな?

何かしないとって思うのに、どうすればいいかも思い浮かばない。




柊は今何をしてるのかな?


あの日以来、私の頭の中には柊がずっといて。


身動きの取れない自分が情けなくて...。


柊に会いたいのか、会いたくないのかさえ分からないなんて...ね。






「...瑠樹、どうかしたか?」

グイッと掴まれた肩。

ビクッと体を揺らして声の持ち主の方へと顔を向けた。


「...う、ううん、何でもないよ、豪」

心配そうに顔を私の顔を見る隣の席の豪に、ゆっくりと首を左右に振ってみせた。


「そうか?顔色悪くねぇか?」

ああ、余計な心配かけてるなぁ。


「あ...夏の疲れが出たかな?」

フフフと笑う。


豪に話せる訳なんてない。


豪が敵対してるキングである柊の事を考えてたなんて。



「保健室行くか?」

心配そうに微笑みを向けてくれる豪に胸の奥がチクンとする。


ごめん...豪。


「あ、そうしようかな」

この空間に居るのが、今は辛いから。


「ああ、そうしろ。今日は夏休みの宿題の答え合わせと復習だけだからな。別に受けなくても問題ねぇし」

「うん」

私はそう返事すると立ち上がる。



「どうしたぁ?ジェンキンス」

少し驚いた顔をしてこちらを見た奥野先生。



「こいつ、具合悪いから保健室連れてく」

奥野先生に返事したのは私じゃなくて豪。


豪は先生の返事を聞く前に立ち上がると私を抱っこした。

いやいや、抱っこは...ちょっと。


ほら、注目の的になってるし...ね?



「あ...お、おぉそうか。ジェンキンス大丈夫か?」

奥野先生は豪に返事を返すと、私を心配そうに見た。


「あ、はい。少し体が怠いだけです」

豪に抱っこされたまま奥野先生に頷いてみせた。


「そうか、気を付けろよ。夏の疲れが出やすいからな」

「はい」

先生と会話してる間に豪は歩き出した。


「行ってくる」

教壇の側を通った時に先生にそう声をかけると、クラスメイトの視線なんて全く気にする様子もなく私を抱っこしたまま教室の入り口へと向かった。










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