社宅アフェクション
「はぁ~……」


深いため息をつきながら、部室へ向かう。


「いっつも早足で行くのに、今日はずいぶんのんびりな?」
「酒田…お前が俺に余計な提案求めるから…」
「あんなにスラスラ出てくると思わないじゃんよぉ。んで、メニュー係?今日から始めなくていいわけ?」


こいつ、他人事だと思って楽しんでるな?顔が笑ってやがる。
それよりも…


「お前知ってるか?」
「何が?」
「甲子園をかけた試合!!もう10日後だぞ!?」
「…あぁ、そうだな。俺、ベンチ入りできなかったから、気ぃ抜けてた」
「お前なぁ!!小学校からやってきた野球だろ」
「その集大成が応援団長か?」
「………」


何も言えなかった。
俺は外野手として選ばれている。部員が多い野球の中で、酒田はベンチにも入れなかった。
その気持ちを、俺は考えられていなかった。


「酒田…俺……」
「ははっ、バカだな本荘!冗談だって、落ちこんでねぇよ、別に俺は。」
「さか…」
「試合まで10日だもんな!顔合わせ終わったから、明日から部門出なくていいんだよな、本荘は。そんな忙しいのに、メニュー係なんてやってらんないよな」


酒田はひとりでまくし立てるように話す。


「代わりに俺が宮崎の手伝いしとくからさ、お前は野球に集中しろよ」
「いや、それは……」
「さぁ!今は練習練習!!」


いつの間にか着いていた部室のドアを、酒田は思い切り開けた。



俺は地区優勝をして、甲子園に行かなければならない───
強くそう思った。
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