社宅アフェクション
京子と直人の絡みが終わったあとも、注文はひっきりなしに入った。


「紅茶とクッキーのセットを2つ!」
「メイドさ~ん、写真お願いしま~す」
「ぼ、僕と写真いいかなぁ~!かわいいメイドちゃ~ん!」
「お好み焼き風もちもちクレープ!!」
「写真…あの、写真……」
「メイド、写──」


あぁ~っ、もうっ!!写真の注文のほうが多いっ!!
てかメイドって、お前に仕えてるわけじゃないわっ!!でも一応1枚50円ってお金取ってるから、無碍(むげ)にもできない。


「花巻さん!2番テーブルのお客さんが、ウーロン茶2つだって。運んで」
「あ、うん。でも私、今ちょっと手が…」
「それ5番テーブルの?会津くんに頼むから、2番テーブルにこれ運んで!これも指名なんだから!」
「指名?」


ハテナが浮かぶ私に、その子は予備のメニューを見せてくれた。そこには──


「ウェイトレスorウェイター指名で+20円!?」
「そっ!だから胸に番号つけてるんじゃん?」


これそういう意味かっ!!てか、このクラスはどんな稼ぎ方してんだよっ!!
本当にメイド喫茶みたいになってる……


「お待たせいたしました。ウーロン茶です」
「ありがと!」


2番テーブルには、大学生っぽい男の子2人組が座っていた。


「この学校祭にきてよかったよ。こんなかわいい子がいるんだからさ……お名前は?」
「え、えと……」
「ほんと、手までかわいいね」
「あのっ……」


いきなり手を握られた。ど、どうしたら……


「ハニー!次の指名きたみたいだよ!」
「な゛っ!?ハ、ハニー!?お前、誰だよ!!」


直人が私の肩をグイッとつかんだ。2人組は、直人の登場と私の呼び方に戸惑っている。


「直人!!」
「忙しいからさ、お客さんとの無駄話はあとあと!はい、5番テーブルにご指名!」
「無駄話だとぉ!?」


私はお盆を持たされ、2番テーブルから強引に引き剥がされた。
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