社宅アフェクション
蒼空と由香里に謝って別れた。
じゃあまた閉祭式の時に、と言って、2人はどこかへ行ってしまった。


「おつかれ、真綾ちゃん。演技、良かったよ」
「美里さん!」
「すごかったぁ!!」
「真綾お姉ちゃん、かっこよかったぁ!!」
「蘭と凛も、みんな来てくれてありがと!」


そのすぐ後、美里さんが蘭と凛をつれて合流した。双子の目は、すごくキラキラしている。


「じゃあ真綾ちゃん。毎年恒例、一緒に屋台巡り行きますか!勝彦くんには逃げられちゃったけど」
「あははっ!逃げ足だけは早いもんね。まぁいいよ、女子だけで行こ!まず着替えなきゃ。さき、部室に行くよ」


毎年美里さんは2日目の学校祭に来てくれて、一緒にお昼を食べるのが恒例行事。勝彦もメンバーに入ってるんだけど……今はいなくて、ちょっと良かった。
私は部室棟に向かおうとして、振り向いた。


「あっ、そうだ。ごめん、美里さん。13時20分から予定入っちゃって…」
「え~!真綾お姉ちゃん行っちゃうのぉ!?」
「行っちゃやだぁ!!」
「あんたら静かにしなさい。いいよ、気にしないで、真綾ちゃん。まだ1時間以上あるし!」


蘭と凛の目はウルウルしている。一緒にいてあげたいんだけど……佳乃の目、怖かったし…


「ごめんね…」
「チビらのことは気にしない!さ、お昼だ!」


美里さんの“お昼”の言葉で、双子はキャーっと声をあげて走り出した。
さっきまでの悲しげな様子はなんだったんだろう……


お昼の後は、双子にさんざん引き回され、楽しいというよりも目まぐるしく時は過ぎた。

          :
          :

そして───


「朝みたいに遅刻しなかったみたいね」
「こんなとこに呼び出すとか、何の用?」


13:18。後ろから聞こえた声に、私は返した。


「ふふっ…やけに強気じゃない。たとえ大声を出したって、誰も助けにこないわよ。ここは」
「へぇ…それはあなたも同じこと……」


……ん?


「あら。何か秘策でも?」
「えぇ、とっておきの──って!!もういいわ!!」


なんなの!?この茶番劇はっ!!三流ドラマかっ!!


「そうね。ちょうど、20分になったし。じゃあちょっと話をしましょうか。真綾?」


振り向くと、佳乃が不敵に笑っていた。



………怖い。
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