社宅アフェクション
一足先に着替えが終わった俺は、酒田をおいて更衣室を後にした。
今日のお化け屋敷は、目黒が友達使ってなんとか回すから心配しなくていいらしい。そう連絡があったって、昨日の帰りに大陸が言っていた。


じゃあ暇な午後、俺は大陸探しに専念するか――――


「勝彦くん♡み~つけた♡」


全身に鳥肌がたつのを感じた。この声は……


「み、み、み………」
「毎年恒例、学校祭巡り♡」


なんでここにいるんだ!?


「なんでここにいるんだぁ?って顔してるねぇ。真綾ちゃんとは、更衣室で着替えてから合流なんだよね。それで部室棟に来たのよ。そしたらなんと……」


美里(さん)がにやっと笑う。


「着替えを済ませてゆうゆうと出てきた君をロックオ~ン‼ってわけよ」
「あ……そ、そう……か………」


対応に困る俺に、指をピストルの形にして向けてくる。無駄にテンション高ぇ美里は怖い。
ここは―――


「そんじゃ!」
「あっ!待ちなさい、勝ひ……え?何?蘭、凛……あぁ、真綾ちゃん来たの。ありが……勝彦く~んっ‼‼」


美里の言葉を背に俺は逃げた。


どこに行っても美里の声がする気がする。もう“さん”をつける余裕も、大陸を探す猶予もない。
俺は忍び、隠れながら、閉祭式までの時間を過ごすことになった。

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