社宅アフェクション
「知らないほうが幸せだよな………か」


知らなきゃいけない―――
今思ったばかりなのに、急に不安になった。父さんの会社の人が来たとき、頭の中に降ってきた言葉。俺の声と女の人の声がまざって、何かを思いだしかけた俺を止めた言葉だ。


今まで、知らなくても生きてこれた。それなりに楽しい毎日だった。何かが足りないなんて思ったこともなかった。


気持ちは、わきあがる前にせき止められていた。でも……


「悪いな、俺。今は違うんだ」


一度あふれたものは戻らない。真実はきっといつか、不安も飲み込んでくれる。
まずはどうしようか。


「………公園」


不思議だった。でも、どうすればいいかと考えはじめた途端、出てきたワードは公園だった。
そうだ。俺の始まりはそこだ。行けば、今なら何か思い出せるかもしれない。


ふと時計を見た。昼を少し回ったところだ。
月曜のこの時間は、社宅の幼稚園児たちが帰ってくる。もしかしたら公園でもう遊んでいる可能性もある。


「いたら行くのは中止だな……」


確認のため、俺はベランダに向かった。
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