社宅アフェクション
私は、ヒトには3種類あると思う。


過去を受け入れて前に進むヒト、過去を気にせずに前に進むヒト、そして……過去を忘れることで前に進めるヒト。


大陸と蒼空は受け入れた。両親が亡くなったばかりの頃は勝彦みたいだったけど、笑顔を取り戻した。
勝彦は忘れた。だから今まできたのかもしれない。


でももう受け入れなきゃいけないって、勝彦は思ってるんだよね。だから、私の話を聞きにきてくれたんでしょ?制止する自分の声を振り切ってまで。


だけどこれ以上、何を話せばいいの?もう何を―――



数年前のように、私は黙ってベンチに座り続けた。隣の勝彦も、何も言わない。
ただ時間だけが過ぎていった。



誰もこない公園。静かすぎる社宅。暑さを感じない太陽。だんだん沈んでいく。
2人の影が伸びる。どこまでも平行線。動かない。交わらない。


空があかく染まる。昼間の太陽とは違う温かさ。ぬくもり。
2人の影が伸びる。揺れ動く。形が変わる。重なった。


「勝彦……?」


隣の男の子は、静かに泣いていた。
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