本当の居場所


「話があるんだけど」


陽人は優矢に負けじと、強気の声で言った。


「話? こっちはねぇよ」

「俺はさゆに話があんだよ。お前には関係ねぇ」

「は? 紗雪を易々、元カレに差し出すとでも思ってんの? 紗雪の彼氏は俺なんだよ」


言い合う陽人と優矢に、あたしは焦ることしかできなくて。

心の中で《やめて》ってひたすら呟いた。


「さゆ…話を聞いてほしい」


優矢の後ろに隠れるあたしに、陽人が訴えかけるように言った。

あたしは優矢の服を掴んで、陽人と視線を合わさなかった。




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