幕末オオカミ 第二部 京都血風編

・企み



「土佐の坂本って言やあ、討幕派の中でも穏健派だって噂だっただろ?
大政奉還を上様に勧めたのも土佐だって言うじゃねえか」


「だからだろうよ。戦をして幕府を倒したかった討幕派の、大義名分を失わせちまったから、恨まれたんだろ」


永倉先生と原田先生が、庭で剣と槍を振り回しながら、そう話していた。


いくらいい加減な二人でも、ちゃんとした稽古の時間は雑談なんかしない。


けれど今は自由時間なので、なんとなく気が晴れないから武器を振り回しているといった感じだった。


「でも、仲が悪かった薩長の手を組ませたって噂もあるじゃないですか。
幕府側にも、恨む理由がないとは言えませんよ」


徳川幕府が政権を失ったことに、幕臣はみんな不安を抱いているし……。


建物に入る階段に腰をかけ、両手であごを支えながら二人の会話に入ると、突然後ろから声をかけられた。


「たまには監察らしいことを言うじゃねえか」


びくっと体がはねあがる。


おそるおそるそちらを見ると、廊下から土方副長がこちらを見下ろしていた。


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