忠犬ハツ恋

タイガーの恋

昼に体験講座、夕方から正規の授業でいつにも増してクタクタだった。
マンションに帰り着いて着替えもせずにベッドに泥のように倒れ込む。

忙し過ぎて天日干しもままならない布団からは少し湿気の匂いがした。

美咲に頼めば週末に布団干しといてくれるんだろうけど…。
美咲の時間を俺の為に潰させたくなかった。

このまま今日は眠ってしまおう。
風呂は明日の朝、シャワーで済ませればいい。

その時、尻のポケットに入れたままの携帯が震え出した。
この着信音は美咲だ。

「もしもし、こんな時間にゴメンね大ちゃん。
もしかしてまだ職場？」

「いや、今、帰ったとこ。どうした？」

「うん……えっとね…。大ちゃんなら知ってるかな？って思って…。」

美咲はそうやって言い淀む。

「何を？数学か？」

「ううん、違うの。えっと…一色先生の事なんだけど…。」

「大我？あいつがどうした？」