忠犬ハツ恋
国生さんは檜山君の挑発に負けていなかった。

「お生憎様、私には彼氏がいるの。
ひがんでるワケじゃない。」

「その彼氏だけどお前と別れたがってたぞ。」

「は?勝手な事言わないで。」

「納涼祭の後一夜を共にしたらしいな?
お前のイビキがシャレにならないくらい酷かったんだと。
国生こそ病院で診てもらったらどうだ?お前の場合産婦人科じゃなくて睡眠外来だな。」

身に覚えがあるのか国生さんはすっかり戦意を喪失して目に涙を浮かべて教室を出て行った。

「ちょっと!檜山君。
あれは言い過ぎ。」

「これで教室が少しは静かになるだろ?」

これが檜山流の茜ちゃんの守り方だった。

私が謹慎してる時も檜山君が目を光らせていたらしいけど、こういうやり方だったんだろうか……?

落ち着いてふと1つ気になったのは私と檜山君が付き合っているように見られていた事。
周りからはそう見えてしまうんだ。

檜山君と抱き締め合ったりキスしちゃったり……それは紛れもない事実。

そして檜山君はここで堂々と"私を好きだ"と宣言してしまった。

ここには東野に通う望月さんもいる。
大ちゃんに今日の事がバレるのも時間の問題かも知れない。
ただ望月さんは私と檜山君が校内で噂になっている事ってくらいしか知り得ない。それ位バラされてもどうって事ない。

今は檜山君が悩みの種だった。
檜山君の今の勢いだと大ちゃんに直に宣戦布告し兼ねない。
もしそうなったら………。

上手い言い訳を考える必要があったが、
言い訳なんて通用するんだろうか?

檜山君は大ちゃんを完璧にブラックだと言うが、それは私も同じだった。
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