忠犬ハツ恋
前進あるのみ!
檜山君が前髪をバッサリ切って来た。

前髪を切ればいいと言ったのは私なのに、
そうする事で堂々と曝け出された檜山君の切れ長の探るような目は
やっぱり隠されていた方が良かったんじゃないかと思わされた。

心の中を全て見透かされそうで目を合わせる事が躊躇われる。

「よぉ!白石。」

「お、…はよ……、思い切ったね檜山君。」

「おかげで視界良好だ。
お前って結構色白かったんだな?」

「……それは前髪長いと分からない事なの?」

「さあな?」

よそのクラスからも檜山君のイメチェンを確認に来ている子がいた。
微かに"かっこいい〜"と言う囁きと悲鳴めいた黄色い声が聞こえる。

「モテモテだね、檜山君。」

「ばぁ〜か、本命にモテなきゃイミねぇよ。」

檜山君はそう言って私の頭を叩く。

「いった〜い!止めてよ!!暴力反対!!
前髪切ったんなら私のシュシュ返してよ。もう要らないでしょ?」

「あ?まだ返ってきてねぇの?」

「????」
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