忠犬ハツ恋
苦悩するチーズリゾット
大ちゃんは私を大ちゃんの車の助手席に押し込むと自らも運転席に乗り込み、車を発進させて開口一番こう言った。

「もう大我には近付くな。」

私の脳裏には去り際に見た一色先生の沈痛な面持ちが染み付いて離れない。

私が無言で俯いていると大ちゃんがそっと私の手を握った。

「美咲?」

大ちゃんは少しも一色先生の気持ちに気付いていないんだろうか?
一色先生はこのまま大ちゃんがずっと独身で自分が側に居続ける事を願いながら生きて行くの?
もし私と大ちゃんが別れたとしても大ちゃんに新しい彼女が出来ない保証なんて何処にも無い。
一色先生はその度に2人の破局を願って苦しんで生きて行く……?

「………大ちゃん…一色先生は………。」

言い掛けて止めた。
一色先生が秘めて来た想いを私が告げていい筈がない。

大ちゃんは私の手を握る力を少し強め私にその先を促す。

「大我が…どうした?」

私は俯き首を横に振った。

「…何でも無い。」
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