忠犬ハツ恋
シルバーリングの行方
シャロンを出たその足で私はお母さんの事務所に向かっていた。

思い立ったが吉日、
檜山君の代わりにシャロンを手伝う許可を貰いに行く。

許可を貰いに行くと言ってもお母さんは子供の意思を尊重するタイプだ。
私が"やりたい"と言う事に反対する事は無い。
でもシャロンの雰囲気を確かめにお店には偵察に来るだろう。
光太郎お兄さんには変な印象は抱かないだろうけど、お母さんはサクラさんを見てどう思うんだろう……?

それよりもシャロンからは東野が真っ正面に見える事でお母さんが有らぬ事を勘違いしてしまうかも知れない。
そんなに大ちゃんのそばに居たいのか?と。
そう言うわけではない事だけは念を押しておかなければ。

事務所に入ると来客を知らせるチャイムが1つ鳴った。

「は〜い!」と言う声と共にお母さんが姿を現す。

「あら?美咲。
やっぱりあんたも来たの?」

「???
あんたも?って何の話?」

「大輔が折り入って話があるから夜に時間くれって。
あまりに畏まって言うからもしかして"出来ちゃいました"とかの報告じゃないでしょうね?」

「ち、違うよ!!」

大ちゃんの話は同棲の許可願いに違いない。
でも私は大ちゃんと同棲はしない。
自分の気持ちに気付いた今、もう大ちゃんの婚約者でいるわけには行かなかった。
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