*甘いモノ*

*梓の家事情*


.....ガチャ、

「ただいま~....ってそうか、今日も夜いないんだっけ」



私は玄関に重い鞄を置いて深いため息をついた。




「ま、あの人夜勤派だからね。夜に居たためしがないし。」


唐突ですまないがあえて言おう、あの人...母は元風俗嬢だ。

普通ならここで恥ずかしいとか自分の親として情けないとか思われる所なんだけど、父が夜逃げして置いていった莫大な借金を返すために働いていたらしい。

昔は驚いたけど今はむしろ自分の身体を使ってまでも私を守ろうとしてくれた事に感謝をしている。




今はもちろんそんなことはせず、スナックバーなんかで働いているし、実際のところ今がイキイキしてるんだったら過去なんかどうでもいいかななんて思ったりするんだよね。




「それはいいんだけど........初めて寂しいなんて思ったな。」

でも、今日だけ。






今日だけは。

「いて欲しかった......なんちゃって」


朝起きた時のような笑顔で"おかえり"って、迎えてほしかった。




「はぁ........」

さっきよりさらに深いため息をついてその場にしゃがみこんだ。

ドン底に突き落とされたような感覚に陥る程、今回の体験はストレスが重かったかな。



全て、終わったんじゃないかって思っちゃうんだ


友達に励ましてもらっても、
昼休みにやけ食いしても、
授業を真面目に聞かなくても。



何一つ、気晴らしになることがなくて。


"彼氏"とか"綺麗な人"とか、その単語を聞くだけであの記憶が甦っちゃうの。


「....だから、私って亜樹が苦手なのかな。」


そういや、亜樹も綺麗だ。


特に今日なんかは亜樹が憎らしく見えた気が....






「....って、こんな事思ってもさらに重くなるだけだし。お風呂でも入るか。」


ネガティブでいたって何も変わんないよねーって無理矢理笑いながらお風呂場へ向かった
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