作り物の貴方
へらっと笑う僕に、彼はぷいっと俯いた。

「言ったそばから嘘くさいんだよ、お前は」

自分が嘘の塊だってことは分かってる。

でも、なんかショック。

そんな嘘っぽさがにじみ出てるんだろうか。

やっぱ、怖がりは怖がりのままってわけかな。

普通に接してるつもりでも、彼に嫌われるのが怖くて、無意識に愛想笑いを浮かべてしまう。

「……僕、笑わない方がいい?」

冗談半分、揶揄う口調で言ってみた。

でも、本気で聞いてる。

「そんなこと、言ってない……ただ」

彼はちょっぴりおかしそうに言って目を伏せた。

「お前が未だに遠慮の塊なのが、ちょっと悲しくなるだけ」

ぽつりと、呟かれた言葉。

彼と知り合って、9ヶ月。

穏やかに穏やかに流れてゆく日々。

どこにでもある日常にさえ、僕はいつも怯えている。

彼にはそれが、うっすら見えているらしかった。

「……遠慮の塊かぁ、僕、そんな風に見えるわけ?」

「うん」

こくりと素直にうなづかれ、ちょっと可笑しくなった。

彼は良くも悪くも自分に素直だ。

……素直であることの怖さを知らない、僕が今一番仲の良い友達。

「……寒いなぁ」

冬の風に吹かれて、僕は小さく零した。

昼休み、弁当を広げている場所は、この季節まさかの屋上。

理由は、彼がここが良いと言うから。

彼には少々、閉所恐怖症の気があるらしく、昼休みは窮屈な四角い部屋から解放される貴重な時間なのだ。

「悪いな」

少し申し訳なさそうにしている彼は、今日もいい奴だ。

「別にいいよ、屋上で弁当とか、なんか青春じゃん」

茶化すように言うと、

「男2人とか虚し」

と本当に虚しそうな声が返ってきた。

思わずけらけら笑ってしまう。

「あー、もしかして」

「へ?」

突然卵焼きを頬張りながら声を上げた彼に首をかしげる。

「お前の笑顔が嘘くさく見えんのって、顔の構造のせいかもしんねぇ。」

なんだそれ、酷い。

治しようがない。

何事にも素直なのは、彼の欠点である。

そして、僕にとっては眩しくてならない美徳でもある。

でも、今はそういう抽象的な思考のあれこれはどうでも良くて、ただ彼の天然っぷりが可笑しい。

おかげで当分、笑いがおさまらなかった。

ああ、彼とはクラスが離れても、ずっと仲良しでいたいなぁと思う、今日この頃である。







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