蝶々、ひらり。
再会




「先生、何たそがれてんの?」


学級委員の中山が日誌を持ってやってくる。


「おう、ご苦労」

「格好つけても似合わないよー」

「余計なお世話だよ!」


生徒との間は良好だ。
若い教師だということで、皆気軽に話しかけてくれる。

人員不足でいきなり担任を任されたが、他のクラスと兼任で副担任をしてくれる先生がよく面倒を見てくれていて、自分らしいクラスづくりもできているのではないかと思う。

日誌のチェックをしてから、自分の鞄の中を探る。
有紀からもらった葉書は、今もそこに眠っている。

悩んで悩んで、
結局、返事は出せなかった。


彼女がどういうつもりで俺に会いたがっているのか分からない。

有紀はいつだって、表情に出る割には本心は口にしない。

あれだけ一緒にいて、有紀の誕生日も食べ物の好みも皆分かっていて。
何でも知ってると思い込んでいたけれど、本当は何一つ分かってなんかいなかったんだ。

傍にいたときでさえこうなのだから、物理的に距離が離れてしまった彼女の気持ちをいくら探ろうとしたって、俺に分かるはずはなかった。



< 18 / 31 >

この作品をシェア

pagetop