棄てられないほど大切な者を

空っぽなのは教室

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【空っぽなのは教室】




香織と会った次の日


つまり今日は月曜日だ。



教室に入ると同時にチャイムがなった。



このチャイムより後に登校すると

遅刻になる。



私は大抵、チャイムに

ギリギリ間に合う電車に乗る。



予定通りチャイムに間に合い

特に焦る必要もなく席についた。



私の席は教室の真ん中らへんにあって

四方を机で固められている。



居心地が悪い席だと思う。



すぐに担任が入ってきて号令がかかる。


例をして再び席についた瞬間


担任が閉めた教室の扉が
がらがらと音をたてて開いた。


『あーっ!間に合わなかったー!』


入ってきたのは男子生徒で

顔に両手を当てて叫んでる。


『林道。遅刻な。』

『ちょ、待とう先生。』

『席につけ。』



焦った様子で先生にすがるも

あっさりと、あしらわれてる。



残念だねー。

なんて思いながらも視線を外して

手元の本を開こうとしたら


隣の席の椅子をひく音がして

思わず顔を上げた。



『あ、おはよー。』

『…うん。』



どうやら私の隣の席らしい遅刻君は

へらりと笑って"おはよー"と言うと


ストンと席に着いて

前の席の男の子と話し始めた。



高校に入って

された初めての挨拶だ。




今日もまた

退屈な学校生活が始まった。




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