貴方に魅せられて
由香里さんは嬉しそうに笑って
メニューを広げた。

「走り回ってお腹空いちゃったわー。
孝ちゃん、いつものコースね。
麻衣ちゃんも私と同じでいいわね。」

由香里さんの気遣いに
感謝しながら頷いた。
私にメニューを渡しても
また金額を見てあたふたするのは
お見通しだ。

私たちは乾杯した。
私の正面には翔平さん。
ドキドキ音を立てる心臓は
一向に収まらない。
翔平さんが目を伏せる度
ついつい翔平さんを見てしまう。


…今までこんな気持ちに
なったことない。

「翔平はね、大学を卒業してすぐ
私の会社の海外支店で
経営学を学びながら働いているんだ。
いずれこいつは私のグループ会社の
社長になるからね。
翔平には兄がいるんだが
彼もまた、私の持つ会社の一つを
任せている。
いずれ彼も君に紹介しないとな。」

その言葉を聞くと
一瞬だが
翔平さんの眉が動いた気がした。

「兄貴は?」

翔平さんが相変わらずのトーンで
叔父様に尋ねる。

またその声に反応する心臓。

あたし寿命10年は縮むな…

そう思う位、私の心臓は
いつもの何倍も早く鼓動を打っている。
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