やっぱり、無理。



いや、官能に限らず。


歴史ものでも、経済でも、随筆に関してでも・・・。


まあ、それを訳すには、専門的知識が必要になるので、下調べは膨大なものになるのだけれど。


そういう醍醐味に、魅力を感じるようになった。





初体験を済ませたばかりの、15の夏に。


ジローの仕事を手伝えと言われ、最初からとんでもない激しい官能小説を手渡された時は、なんて奴だ、と思ったけれど。


結局は、私に。


そう言ったことを、気づかせ、導きたかったのかもしれないと、最近思うようになった。


だけど、すぐに実践で説明したというのは、趣味と実益を兼ねていたという事も、否めないが・・・。





まあ、とにかく。


ここ数年は、そんな翻訳にも慣れ。



ジローの下訳の範囲を超え、面倒くさがりと多忙であるジローの仕事のフォローを随分させられるように、いつの間にかなっていた。



今私は大学4年生だけれど、このまま大学院へ進む予定で。


てゆうか。


最初から、家庭環境のこともあるし、一般企業への就職は無理だと思っていたし。


ジローなんかは、そのまま大学院を卒業しても私がジローの研究室に残ると勝手に思っている・・・というより、決めているし。


いや、既に。


ジローが今の仕事をしていく上で、私のフォローなくしては成り立たないので私の意思とは関係なく、それは決定事項になっていて・・・。



確かに、私は。



ジローに惚れていて。


研究室に残って、変わらずジローの仕事を手伝うのが一番いいのだと思うけれど。



だけど、何でもかんでもジローは勝手に決めて・・・私の気持ちなんて聞いてくれない。




時々、不安になる。



ジローに、依存しすぎている自分が。



もし。



ジローが、いなくなったら――



私は、どうしたらいいのだろう?




こんな、ジローに依存したままの私ではと・・・。



心の中で、不安が蠢いているのに・・・。







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