夏の名前



中学校に入学して、周りの友達はみんな垢抜けていった。

中学校は小学校より少し遠く、市街地に近かった。

知らない人が殆どだった。


地元で農家を継ぐと言っていた同じ小学校の友達は皆次第に都会への憧れを募らせていった。



そして気付けば、この中学校で農家を継ぐという奴は速斗だけになっていた。




中学校はそれなりに楽しかった。

新しい友達も出来たし、部活の先輩もいい人だった。


大人びて、彼女や彼氏を作ってる人もいたけど、速斗にはなんだかしっくり来なかった。


女子に好きだと言われたこともあったけど、休日は両親の手伝いがしたかったので断った。


学年の雰囲気に馴染めてない訳じゃなかったけど、みんなの変化に、速斗は着いて行けないでいた。

速斗にとっては、新しい友人や、恋人なんかより、自宅の作物の方が魅力的に感じた。


それでも、なるべく皆と同じ様に振る舞った。


部活のバスケットは得意だったし、勉強も真面目にやっていた。
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