瞳が映す景色

「でも、お兄さん夫婦も感謝してるでしょ?」


「うん。それはね。佳奈ちゃんなんか、あたしに甘い甘い。で、兄はそれ見てヤキモチ……って馬鹿なんじゃないの」


「あっ、それ羨ましいっ!――佳奈ちゃんが」


菜々はあたしの家族とも仲が良く、時折泊まりに来ては我が家に馴染んでいる。バイトを始めた当初など、心配で心配でと、あたしが仕事中でも来てくれ、リビングを和ませてくれていた。


「――ま、順調ですよ」


「それはなにより」


本当に良かったと、小さな肩を揺らして、菜々は安堵してくれる。




――一年前。あたしがバイトを始めるきっかけになった出来事は、あたしが名乗りをあげるまで、家の雰囲気を少しばかり暗くしていた。




その頃、兄と佳奈ちゃんは結婚式の準備真っ最中だった。


高校時代から一途に付き合っていた二人は、当たり前のように婚約をし、佳奈ちゃんは勤めている会社を籍を入れる時点で辞め、家業を継ぐ兄を支えていく道を選んだ。食品会社の開発部署は佳奈ちゃんも一生懸命で楽しそうだったのに。


迷い、というか。会社を辞めるということに、何かしらの感情はあるけど後悔はないと言い切る佳奈ちゃんは男前だった。


けど、


上司に結婚と退職の話をしようとした直前、佳奈ちゃんに新商品開発チームメンバーの内示があがった。

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