瞳が映す景色

「告白、ってうか、もどきなそれをしたのは少し前のことなんだけど――」


時刻は二十時を過ぎていて、数分前に落とされた看板の照明。カウンター内の掃除を済ませると、パーカーを羽織って外に回った。


ゴミ箱を片付けるあたしに、もう白鳥さんは手伝うことはせず、ただただ、懺悔になど到底聞こえない最低行動を唇から紡ぎ出す。


それはどうやら先月の出来事で、偶然あたしたちが会った映画の夜の翌日らしかった。


「――藁科に、ね」


覚えているかと聞かれるように首を傾げられ、知っている名前を記憶から手繰り寄せる。白鳥さんが大好きな同僚のゲンちゃんのことが大好きな教え子だ。


……、


「――、ふうん。生徒と恋愛はしないんじゃなかったの?あっ、でも生徒じゃなくなるのか。でも、女子高生のそれなんて、紛い物ばかりなんでしょ」


ただの気まぐれとかだったら出禁にしようと決めた。顧客を逃したと兄に叱られるとしても構わない。バイト代を使って、白鳥さん分を無理矢理埋めてやる。


気まぐれなら、どこもかしこも最低に成り果てたということだ。いたぶる必要のない人にまでなんて……もういっそ、そうであってほしい。


革靴のあたりで組んでいた長い足を解き、視線は何処かにさ迷わせていた。


「好き、じゃあ、なかった。――でも、藁科は、僕の歪みを僕に認めさせて、安易だと思ってたことを覆してきた子だから」


心の知らない部分で万が一そうなってもいいと思ったのかな――白鳥さんは独りごちた。

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