瞳が映す景色

そんなこんなで走って職員室へ走ったところ、あたしたち三人はその扉の向こうで膝を折った。


……今日に限って、だったらしい。常備していた非常食のカップ麺ラストひとつは、残りかすのスープが、今まさにシンクへと流されていた。


「あぁぁぁ。スープだけでも残ってたら雑炊にするのにぃ……」


いやいや雅。あたし、あの体育の先生の残りスープなら空腹を選ぶよ。


「私のおにぎり、ひとつ食べてね」


「菜々だってペコペコでしょ。リレーもあるし」


「大丈夫。帰りに何かを大食いすれば」


「あぁぁぁ、小町ぃ。わたしのおかずも食べてねぇ。むしろ全部でもいいっ」


うちひしがれてくれる雅の背を撫でながら、とても申し訳なくなってしまう。あたしのミスなのに。


ハイライトは、応援団だけだ。残りの種目にあたしは選手登録されていない。どうにかして分けてくれるだろうお弁当を最小限に留めさせて、ふたりには午後からの競技で花を咲かせてもらいたい。


大丈夫。たった十五分間。腹はくくったんだ。赤組の先頭に立つくらい、


やってみせる。


「あれ~、どうしたの~?」


「っ」


教室に戻ろうとしたあたしたちを、質はいいのに、なんとも間延びした男の人の声が引き留めてきた。


「おっ、お腹が……空いたんですぅ」


その声に一番に反応した雅が、もう餓死寸前みたいな形相と声で、途端にすがり始めてしまった。

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