瞳が映す景色

「白鳥さんは、いつか刺されると思う」


「病み上がりなのに調子いいね~。いつも以上に気を使ってもらえちゃった。――体調は、もう本当に大丈夫?」


白鳥さんの勤める高校の卒業式翌日。


昔を振り返るのは昨夜ベッドの中で終了させた。菜々が急遽泊まってくれ、何を話すでもなく一緒にいてくれた。だから、あんな失態はもう晒さないでいられるくらいには大丈夫。


「大丈夫大丈夫。昨日はごめんなさい。なんか、途中から気持ち悪かったみたい。胸くそ悪い話をしてたせいかな」


「酷いっ。今日もマリア様は優しくない。癒されない」


一日、また一日と日を追うごとに、もっと平気になっていく。人間は、嫌味なくらい頑丈なのだから。


「非道な人間には厳しくいこうかと。――いつか、白鳥さんは刺されても、犯人の顔なんか覚えてなくて迷宮入りコース。それは自業自得だから観念しておかなきゃ。これからは、振った生徒の顔くらい覚えておきましょう。心、入れ替えたんでしょ?」


願わくは、


もうこれ以上、あたしたちみたいな子を作らないで。


その気持ちは本物だったと、思ってさえくれればいいんだから。


付き合えとか、そんな強要をする子なんて、本物の中にはいないから。ちゃんと、白鳥さんを尊重してくれる。


「精進するよ~」


「うん。頑張れ」


恋じゃない。そんな感情は、宝物だったスポーツドリンクの封を開け、シンクに流したときに一緒に捨てた。切った髪の重みと一緒に美容院に置いてきた。


水面下で多少なりとも事情を知るあたしは、更正を促すため、大嫌いだけど、仕方がないから、


今日も今日とてそんな感じに過ごすんだ。








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②ー5・ブラックボックス
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