瞳が映す景色

②ー12・教科書には載ってなかった。

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②ー12・教科書には載ってなかった。
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――思い返せば、色々やらかしてしまったと、いたたまれなくなる。




あの日以来、白鳥さんとは会っていない。翌日以降は家からも逃げて、迷惑極まりなく菜々の家に逃げ込んだ。


菜々の前では泣きじゃくれるあたしと、何かあったのは違いないのに、人前で泣くのが嫌いな顔の浮腫んだ菜々。お互いの状態を争うように浮上させること三日。


どうにかこうにか、突っつかれたら倒れて起き上がれなくなる状態からは抜け出せた。あとはリハビリみたいに規律ある生活をすることで、あの出来事を頭の隅に追いやった。


人間というのは強かだと溜め息し、同時に感謝する。


旅行から帰ってきた家族には、開口一番兄から白鳥さんとご飯に出掛けたかと訊ねられたけど、無視した。以来、特に何もなし。




短い春の休みは突風の如く過ぎていき、あたしは通勤時間片道四十分の距離の会社員となる。配属されたのは経理で、はっきりいって仕事内容の訳が分からない。お店で釣り銭管理をするのとは訳が違う。


覚えることだらけで脳みそがパンクしそうなのに、頭の隅には白鳥さんがきっちりいて、彼は、上書き禁止、強制永久保存版として居座るつもりみたいだ。


馬鹿みたい、と苦笑する。


白鳥さんは、お店の臨時休業明け、まばらに通ってきてはいたらしい。佳奈ちゃんが通りすがりに呟いてくれた。けれどそれも、四月になった今はなくなったらしい。


あんな不快なことがあって、こんなあたしがいる場所になど、足は遠のくだろう。


勝手に怒って、暴言吐いて、誘惑して、追い出して。そういえば核心なんて何も伝えずにいたと今更思った。


どうしてこうなったかを知らないまま、白鳥さんは悲しい顔であたしに叫ばれていた。だからきっと、徐々に怒りが込み上げてきたんだろう。

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