瞳が映す景色

冬休み。出勤すると、準備室のデスクにマフラーが置いてあった。丁寧に畳まれたそれを見て、自然に心が整えられ、そのままの気持ちで、おざなりに済ませた祝いの言葉を、今度こそ心から伊藤先生に伝えられた。


『おめでとう』と『ありがとう』


それだけだった。もうそれだけで、充分な関係 だったんだ。


「良かったです。……でも、ここでそういうお話はいけません。嬉しいですけど、心を鬼にしないと。――でも……」


人差し指を唇にかざし、藁科が頬染める。


「でも、今日だけ私も。――今日は私のこと、無理だって、言わないんですね。言われても諦めませんけどっ! さようならっ」


「っ」


その言葉で愕然としてしまったオレは、藁科がいなくなってからまるで言い聞かせるのように、それを漏らした。


「……サイテーだ……オレ……」

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