いじめられっ子に捧ぐ俺の青春。 (上)

最終話 夏休みの最後に




今日はここ、津川市で大規模な花火大会

が行われる。



この津山大夏祭りは毎年、隣の県の人ま

で巻き込むほどの知名度だ。




それだけ人が集まれば当然、女子も選り

取りみどりだ。




小学校の時は家で花火を見るか、山に

籠ってるかだったし。

(解: 籠ってはいない。)



中学も去年までは練習三昧でまともに行

けたことがない。




だから今回は以外と楽しみだ。



全力でとっておきの美少女をゲットしに

行ってやるぜ。





「おせーよっ!! 」



やっと着替え終わったタケと家を出た時

には、花火がちらほら打ち上げられ始めて

いた。



「間に合うかなぁ…」



「あんな所、山に比べたらちょいとそこま

でレベルだっ。 行くぞっ!! 」




津山大夏祭りは北中近くの駅から大

体20分の津山駅周辺だ。




俺達はタケの家から自転車で向かう。



田んぼを駆け抜け、商店街を走り抜け、

川沿いの土手を進み、橋を超え……



おおよそ自転車で1時間はかかる。




そう。

電車の方が早い。






俺達は名物花火の真っ直中、祭り会場に到

着した。



会場につくと、普段は交通量の激しい道路

が人混みに溢れて違う交通量を作り出して

いる。



道路の左右には所狭しと出店が立ち並

び、人の流れを滞らせていた。




「おーっしっっ!! 遊ぶぜーっ、タケ」

「ちょ、ちょっと待ってよー!! 」


人混みをズンズンと掻き分けて進む。






と…



ある場所に目を奪われる。


目の前に広がるのは駅前広場の出店が立ち

並ぶ場所とは少し離れた噴水広場。




そこに流れるようなサラサラの黒髪に、少

し地味たが紺色をベースにした青い花柄の

浴衣を纏った美少女だった。





こ、これは…

まさしく運命の出逢い!!




(勇気を出せ!! 俺は不良だ。

いきなり声をかけたって、許されるさ…

だって不良だものっ。)




俺はついてこれていないタケを尻目に早速

その美少女に声をかけた。




「ね、ねぇ。 こんな所で1人で何してる

の!? 俺、拓也って言うんだけど…

よかったら、一緒に廻らない!?」



緊張して、一気に喋ってしまった。


彼女はうっとおしそうな目をこちらに向け

る。


「なに…? ナンパのつもり?

だから田舎は嫌なのよ…」


彼女はかなりキツい事を言ったのではある

まいか…



そんな事を思って絶句していると、そこへ

タケが息を切らせて追い付いてきた。


「拓也君っ、早いってば!! もうちょっ…

ぇ、この人… えっ!!


拓也君、本当にナンパしてるのっ!?」



彼女の冷たい言葉で撃沈しているナンパ

素人の俺に、タケは追い討ちをかける。




「ダッサ…。」


彼女はそう呟くと顔を背けてしまった。



がーんっっ!! と言う音が聞こえそうな程落

ち込む俺を見て、なにか察したのかタケは

彼女に謝りだした。




「あ、あの、すいませんうちの拓也君が…
こんなおかしなカッコ… じゃなくて。

不良っぽいですけど、本当は僕みたいない

じめられっ子でも優しくしてくれるような

人で… えーと、あの…」




…ん!? 今おかしなカッコと言ったか!?

「お、おい!! タケ…」





タケは相変わらずモゴモゴと何か説得でも

しているようだ。


(則武くーん、聞こえてるんですよー)







「ふっ…ふふ、面白いね。」



彼女が俺達のやり取りを見て、笑った。



「まぁ…こんなオタクみたいな子といるん

なら、タチの悪い不良じゃなさそう。」




なんだか空気が和やかになった。


これはある意味ナンパ成功なんではない

だろうか。



タケに助けられる形になったのは許しがた

いが、結果オーライとしよう。


ここがチャンスとばかりにもう一度押して

みる。


「じ、じゃあ、よかったら…」


「ごめんなさい、私もう帰るつもりだった

から。 今日は親がこっちに来てるから、た

またま遊びに来てみただけ。」




彼女の父は単身赴任でこの津山市に来てる

らしい。


彼女は夏休みを使って都内の方から父に会

いに来た所、お祭りがやってるから見てき

たらどうだと言われ、今に至ると言うこと

だ。



「バカにしてたけど…お陰でちょっと面白

かったかも。でも、あんまり遅くなると心

配するから帰るね。」



そう言うと、彼女は軽やかに立ち上がると

スタスタ歩いて行ってしまう。



「あ、ちょっと!! 」



俺はせっかくの出逢いが終わってしまう

と思わず声をかけた。



彼女は振り返ると笑顔で言った。




「……また会うかもねっ。」






< 12 / 13 >

この作品をシェア

pagetop