いじめられっ子に捧ぐ俺の青春。 (上)

2 話 憧れ





俺は中学1年の頃まで普通の奴だった。


少し大きく感じる学ランのボタンを

生真面目にフックまで留め、

桜舞い散る校門通りをテクテクテクテク…



まぁ、不良のカッコがよく分からなかっただけで…

心の中ではナメられてたまるかと言う気持

ちと、モテモテ青春時代を送るぞと言う不

良精神全快のつもりだ。



だが今までの様にのんびりとはいかない。

生温い平和な生活は終わり、戦争が始まる

のだ。



なぜなら、中学生になった事により今まで

違う小学校だった奴らが一概に肩を並べる

のだ。

つまり見たこともない女子達が…。

恋は戦争だ。



だから俺は入学早々の部活選びで迷いなく

テニス部に入部した。



実際テニス部には可愛い女子がたくさんい

て、そこそこな外見の俺は声をかけてもら

うこともあり順調な滑り出しだった。





たが、テニス部には1つ問題がある…



男子が貧弱という事だ。



俺は小学校の時から筋トレに、山登り、

暇さえあれば体を酷使してきた。




これから集まるのは色んな学校の女子

だけではない。

当然、東西南北の小学校から腕自慢の不良

共が集まると言うのにっ!!


なんと危機感の足りない事か。と…





そう、正直なめていた。

テニス部を、テニス部員を…

この時までは。





その後何度か練習に参加したが、まあ俺の

体力に及ぶ程のものではなかった。

同じ1年の中にはダウンする者も

多かったが。

そんなテニス部の中に一際目立つ人がいた。






テニス部の部長。



二年の時から全国大会に出場する

北中こと、北見中学テニス部のエース。

東雲 結城 (しののめ ゆうき)。


高身長にシュッとした顔つき、黒髪を

サラサラとなびかせた姿に女子部員は

釘付けだ。



まぁだが、俺からすればモテてもひょろい

男ではなと、内心バカにしていた。



…そんなある日の事。


俺が校門に向かって歩いていると、

女子に囲まれながら帰る1人の

男がいた…部長だ。



付きまとっている女子達はキャピキャピと

いった様子でなにやら話しかけている

が、部長は涼しげな顔で微笑むばかりだ。




全く、うらやましい。

などと思っていると、校門の外に見慣れな

い制服を来た男子が二人。


(あれは…、白戸高校の制服だ。)




白戸高校(しらとこうこう) はあまりいい噂

を聞かない高校だが、うちの中学から近い

所にある為よく見かけるのだ。




白戸高校の生徒は女子に囲まれた部長に絡

んでいる様子だった。



(ぅわぁ…モテるのも、大変だなぁ。

どうするんだろ、女子の前でカッコ悪い

事になったら…)



剣呑な雰囲気で高校生は部長の胸ぐらを掴

み、怒鳴っている。


女子も怖がってしまい、部長の後ろで固

まっている。




あわよくば「やられちゃえー、部長ー」

とか思っていた俺を責めないで欲しい。



…ところが、だ。

部長はその高校生の腕を掴み、捻りあげた

のだ。


(なにぃ!! 怖くないのか!? もう少し近づこう)



声がかろうじて聞こえる木陰に身を潜めた

俺はその様子を見ていた。





「なめてなんかいません。

ただ、暴力は止めてください。」



「てめぇっ!! ざけんなぁっ中坊が!! 」


高校生の1人…ここでは高校生Bとしよ

う、が部長に殴りかかろうとした。

(…ケンカだ…!)


と、そこで高校生Bは前のめりにずっ転ん

だ。



胸ぐらを掴んでいた高校生Aはビックリし

て後ろを振り返ったが、そこで高校生Bと同

様の運命を辿った。


(なっ、マジかよ…、あの人は確か…)






高校生A,Bを一瞬でのした男はその後ろに

二人の女子を連れて、夕陽に溶け込むよう

な色の髪の毛を輝かせ笑っていた。


(あの人は確か…

うちの中学でケンカが一番強いって言う超

不良で女好きの……

野谷先輩…!? 女子高生まで連れて歩ける

とはっ!)




部長は驚いた様子だったが、先程まで付き

まとっていた女子達に一言謝ると先に帰ら

せた。




「野谷…なにしてんだ、こんなとこで。」


部長は憮然とした表情で野谷先輩に話しか

ける。



「おぃおぃ、俺より女の数多いな~

全く隅に置けない奴だ。」



はははと笑いながら、野谷先輩は自分の後

ろにいる女子高生のお尻をナデナデ…



「ちょっと野谷く~ん」などと楽しそうに

している。




「おぃ東雲、まだテニスやってんのかぁ…

また、二人でつるもーぜ♪ なっ。」



「今年は最後の夏大だ、 今年も全国へ行く

つもりだ。」


「~っはぁ…、全く…まっ、んならここに

いたら、ヤベーだろ。 早く帰れよっ。」




「…あ、…あぁ。」


「じゃぁな。」


そう言うと、部長はその場を去ろうと歩き

出した。



「野谷くんー、男らしーっ」


「さっすがっ!! 強いし、かっこいい!! 白戸

高って、悪で有名なんだょー」



「俺にかかればよゆー、よゆーってかっ!! 」



と、その時部長が突然振り返った。




「…野谷、あんまカッコつけんなよ。

……さんきゅーな。」




じゃ、と言って部長はまた歩き出した。



「ふっ…。 うっせーよ、バーカ…」

野谷先輩もとっとと女子達を連れどこかへ

行ってしまった。




(……かっ、かっこいーーーー!!

かっこよすぎるって!!

てか、なんでうちのひょろひょろ部長と学

校一の不良の野谷先輩が…

えっ!! まさか、部長…強いの!? 不良だった

の!? ぇーっ!!)



「か、かっこいぃ……」



まぁそれから俺が部長を見直すことになっ

たのは言うまでもない。

我ながら単純脳だと思う。






その時決めたんだ。

俺はカッコイイ不良になるって!


そう…野谷先輩のような。

カッコイイ不良に!!




















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