三周年記念小説
「亮……」

俺たちから離れて
亮くんに抱き着いた恵くん。

「恵?
胡桃たちと
話してたんじゃなかったのか」

《二人が亮の傍にいろって》
と抱き着いまま説明している。

「そっか、じゃぁ
後ろからじゃなくて
前から抱き着けよ」

振り向くと亮くんが
一度立ち上がり、恵くんを
抱きしめたまま座った。

「本当にごめん」

亮くんの胸に
顔を押し付けながら謝った。

「もう、何処にも行くなよ?
今度居なくなったら
俺は何するかわからないからな」

亮くん、
それは脅しだよ……

「わかってる
万が一、また
三人が知らない内に
居なくなったら
監禁でも何でも
してくれて構わないよ」

クスッ、そうだった
あんなのは脅しにすら
ならなかったな。

あの彼女が
言うように俺たちは
変わっている。

頭のネジが数本
とんでるのかもしれないが
俺たちには
どうでもいいことで
他人の物差しで
はかられるのは嫌いだ。

『恵ちゃんの気持ち、解るかも』

思った通り、
胡桃ちゃんも同じだ。


『俺も解るよ』

これが俺たち家族で
常識なんて知ったことじゃない。
変だと言われようが、
異常だと言われようが
閉鎖的と言われようが
別に構いやしない。

誰の理解もいらない
俺たちだけの世界。

恵くんが帰って来て
一安心していたせいか
少し気を抜きすぎて
いたらしい。

もっと注意を払って
おくべきだったと思う。

まさか、例の彼女が
数人の男を連れて
此処に乗り込んで来るなんて
この時は
誰も予想だにしていなかった。

そう、恋人だったはずの
恵くんでさえ……
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