潮にのってきた彼女
フルフィルパール。
7つの真珠でできた首飾り。
7つの超大粒の真珠のうち、既に役目を果たした6つは輝きを失って黒ずんでいる。

そして、残りのひとつの真珠に願い事をすると、真珠は代償として、命をひとつ、奪っていくという……。

おとぎ話じみた話だった。でも、そういえば、昔ばあちゃんと級友だったという夏帆のおばあさんが、真珠の話をしていただとか夏帆が言っていたことがあった。

それならばあちゃんも知っていたって、おかしくない。
なのにどうしてだろう。今までばあちゃんに真珠のことを聞いたためしがなかったのは。
何か理由があるような、ないような。

その時ふと、以前に2回ほど見た、雰囲気の違ったばあちゃんの姿を思い出した。

すっと自然に伸びた背筋。遠いところを見つめるような瞳。瞬間的にだが、ばあちゃんの声や後ろ姿に少女の気配を感じたこともあった。

なんで今、そんなこと。心が少しざわめく。


だけど今はとにかく真珠のことだ。少しでも何かわかることがあればいい。

少しでも。そう思って俺は、ばあちゃんに、真珠の話を持ち出した。


「そういえばさあ」

「なんや?」

「ばあちゃん、フルフィルパールって、聞いたことある?」


パチン、と、ばあちゃんの握ったはさみが太い茎を分断した音がした。

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